晩ご飯の片付けを終え、お茶を入れる準備をする。
目の前でお湯が沸くのを待ちながら、珍しいことに気がついた。


(あれ?まだテレビついてる………)















< 御 剣 『 つ け っ ぱ な し の テ レ ビ 。 』 >















今日は久々に会えるということで、御剣検事のお家に来た私。

私と御剣検事はいわゆる恋人とかいう仲だ。





ついさっき晩ご飯を終えた所で、御剣検事はソファでニュースを見ていた。
私は台所で食後のお茶の用意をしている、のだけれど。



「御剣検事?」



私はひょい、と台所から覗いてみた。
ソファの向こうに御剣検事の広い背中の一部と後頭部が見える。

けれど、返事はない。



その前には、つけっぱなしのテレビ。
ニュースはとっくに終わっていて、しょうもないバラエティが映っている。
いつもはニュースが終わればすぐに切ってしまうのに。



(もしかして……)



コンロの火を消して、私は台所を出た。



「御剣検事……?」



もう一度小さく呼びかけてから、そっとその顔をのぞき込む。



(…やっぱり…)



御剣検事は、どうやらうたた寝してしまったらしい。


眉間にシワを寄せたまま寝ているから、思わず小さく笑ってしまった。
考えごとでもしていたのだろうか。



(疲れてるんだろうなぁ……毎日毎日忙しいもんね…)



起こすのは忍びなかったけど、このまま寝ていたら風邪をひいてしまう。
私は隣に座って、ゆるゆるとその体を揺らした。



「検事、御剣検事……怜侍さん、起きて。風邪ひいちゃうよ」

「……ん、ム………」



御剣検事は一旦自分で体をずらしたものの、そのまま今度は私の肩に頭を乗せて、寝息を立て始めてしまった。





気恥ずかしいやら何やら。

体温が急上昇したのが自分でもわかる。





「怜侍さぁん……」



情けない声で呼んでみたが起きる気配がない。

私は起こすことを断念して、近くにあった毛布で自分たちを包んだ。
御剣検事を起こさないよう細心の注意を払う。





肩から御剣検事のぬくもりが伝わってきて、胸が高鳴る。

肩がちょっと重いけど、あったかくて幸せだ。





ふと視線を上げると、テレビがつけっぱなしのままだった。
けれどリモコンまでは手が届きそうにない。

仕方がないから、そのままほっておくことにした。


テレビでは相変わらずしょうもないバラエティ。





その雑音の中で私も、ゆっくりと意識を手放していった。