自分が決めたことだから、後悔しないと思ってた。
けれどやはり自分でも自分のコトはわからないものらしい。

目の前の紙切れの山は、書きかけの詩のようだ、なんて考えて。

苛ついた僕はそれを机の上から払い落とした。















< メ ロ 『 書 き か け の 詩 。 』 >















僕が右に払った紙切れは空中に舞い上がり、ひらひらと落ちて行く。
そしてカサカサと音を立てながら床の上に重なる。



「くそっ!」



次に、持っていたペンを床に投げる。
ペンは床に当たると、弧を描きながら僕と反対方向に飛んでいった。





ワイミーズハウスから出て行って、数週間。
今は安ホテルに宿泊中、だ。
こんなことを続けていればいずれ金は尽きる。

次の手はすでに頭の中で組み立てられていて、僕にならできる自信がある。





けれど。


ただ一人の少女が、僕を邪魔する。


頭の中に、ちらつく。





なぁ、怒っているか?
それとも、悲しんでいるか?

僕が勝手に、何も言わずに出て行ったこと。



だって、Lが死んだんだ。

あの、Lが。



………。





こうするしかなかった。

そう何度言い聞かせただろう。



あの孤児院を飛び出すこと。

覚悟ならあった。

後悔なんてしないと思った。

アイツのこと、忘れる自信だって、あった。





なのに。


こんなにも、愛しかったなんて。


今すぐあの孤児院に…いや、アイツの元に行きたいなんていう衝動が、生まれるなんて。





けれどそんなこと、できない。

僕のプライドが許す訳、ない。





僕は馬鹿か?

紙くずを拾ってゴミ箱につっこむ。





まだ僕らは幼くて、ただなんとなく傍にいただけだと思っていた。
けれど自分の知らないところで気持ちは育ってゆく。
いつのまにか心の中で温まっていた感情。



それは、僕だけか?

僕だけだったら、どうするんだ?

アイツと僕の関係は、アイツにとっては重要でないかもしれないんだ。



それならいっそこのまま………。

このまま諦めてしまった方が、どんなに楽だろう。



何度もそう思って。

何度も試みた。





けれど、諦めきれなくて。

この気持ちを言葉にしようとペンを取って紙に向かっては、どうにもならない感情が襲ってきて。

結局、このザマだ。





なぁ、わかってんのか?

お前一人のせいで僕はこんなにも揺さぶられているんだ。



もっと早く気付いていれば。

もっと早く気付いていれば。

こんなことにはならなかったのだろうか。





書きかけの詩はどんどん溜まっていって。
いくら燃してもキリがない。
シャレにもならない。


僕は溜め息をついて、ペンを拾い上げる。


どうせ書かねばならないんだ。
そうでないと、前へなんて進めそうにもない。



そしていつか………。

書きかけの詩が書き終われば。





それがきっと、全ての始まり。