ぼんやりと外を見ていた。
窓の外を捜してみたって。
金髪おかっぱの男の子、もういないのに。
< メ ロ 『 が ら く た の 山 。 』( side
ヒ ロ イ ン ) >
いつもと変わらない皆、いつもと変わらない孤児院、いつもとかわらない生活。
いつもどおりに振舞う、私。
けれどモノクロの毎日はひどく憂鬱で。
そのように私が日々を送っていることを、あの聡明なニアなら或いは知っているかもしれない。
つまらない?ううん。
死にたい?そういうワケでもない。
退屈?別に。
何か足りない?
………そう、足りない。
だって消えてしまった。
誰よりも何よりも大切な人が、私に黙って、いなくなった。
誰よりも彼を理解していると思っていた。
誰よりも彼の近くにいると思っていた。
誰よりも彼は私を想っていると思っていた。
それは全て私の思い込みだったのだろうか。
この部屋には誰もいないと知っていてか、涙が一筋頬を伝う。
全て私の思い違いだったのだろうか。
可能性は少なくない。
まだ大人ともいえない私たちは、ただなんとなく傍にいただけで。
愛の言葉を深くかわすこともなかった。
お互いの気持ちを生ぬるく温めあい、ほんの少し確かめあって。
それだけで満足していた日々。
それは私にとってはとてつもなく重要であったけれど、彼にとってはさほど重要でなかったのかもしれない。
ねぇ、どうなの?
メロ………。
…彼がいなくなってから。
すべてはまるでがらくたの様。
彼が使っていた机や、ベッドや、何もかも。
彼からもらった何もかも。
すべて、すべていらない。
いらない。
いらない。
彼を喚起させるものすべていらない。
世の中が、がらくたの山に、なってしまったよう………。
がちゃり、と扉が開く。
涙を隠して振り向く。
「ロジャー、どうしたの?」
「手紙が来ていたよ」
「誰から?」
「それが、名前がなくて………」
「ふぅん、ありがとう」
ロジャーは私に手紙を渡すと、他にも手紙があるのか、行ってしまった。
受け取った手紙を、ぺりり、と空ける。
飾り気のないシンプルな便箋からは、これまたそっけない薄い紙。
広げて、すぐにわかった。
「メロの…字…だ……」
先を読むのが怖い気持ちと、読みたい気持ちとがせめぎあう。
手紙を持つ手が、震えた。
がらくたの、山は。
果たして本来の意味を取り戻し。
私の中で再び息づき始めるのだろうか………。