ニア、は…外で遊ぼうとしなくて。
私、は…騒がしいのが苦手で。
確かにお互い静を好む共通点があったけれど……それにしても最近、遭遇率が高いような気がする。
< ニ ア 『 君 の い る 場 所 』 >
今日はすごくいい天気。
一面の青空を見上げる私は、孤児院の裏の芝生に座っている。
その上を飛行機雲。
ぼんやりと雲の軌跡を見る。
…さく、さく、さく……。
爽やかな風の中に足音が聞こえ、反射的に振り向く。
「……ニア」
柔らかい日差しの中をこちらにやって来る男の子。
光に透けそうなくらい白い肌、きらきらと銀に見える灰色の髪。
「………どうも…」
片手に分厚い本。
きっと私なんかじゃ読めないくらい難しいんだろうな。
最近、ニアとよく一緒にいる自分にふと気づく。
「珍しいね、外に出るの」
「ぇぇ、まぁ…日光にあたるのも大切なことですから」
ニアは無表情に答えると、少し私から間を置いて座った。
それからちょっと考え込んだ後、本を開きながら口を開く。
「…それにあなたがいましたから」
「ぇ?」
私、驚いてニアを見た。
どういう…意味だろう。
ニアは相変わらず無表情で、何を考えているのか全然読めない。
しばらく沈黙した後、ニアは本を閉じて未だ悩む私に言った。
「あなたがここにいたから…ここに着たのです。あなたのことをもっと知りたいから」
心臓が高鳴った。
「それは……期待していいの?」
「はい」
顔が急激に熱くなるのを感じた。
相変わらず無表情のニアが憎らしかった。
そうでなくても少ない勇気を振り絞る。
だって千載一遇のチャンスって、このことでしょ?
「…じゃぁ、私も今度からニアのこと探すよ」
「ぇ…?」
「私もニアのこと、知りたいから」
私達の間を緩やかな風が抜けた。
ニアはちょっと驚いた顔のまま、私に問いかける。
「…それは、期待していいってことですか?」
「うん!」
精一杯にこりと微笑んだら、ニアも口の端をちょっと、あげた。
心臓が再び高鳴る。
これからは。
君のいる場所、そこが私のいる場所なんだ。