今日は久しぶりのデートで。
昨日の夜何を着ていこうかちょっと迷って。
結局この服にした。
お気に入りの、服。
< 松 田 『 お 気 に 入 り の 服 。 』 >
久しぶりに会う桃太はあいかわらず元気そう。
満面の笑顔で話し掛けられて、私まで思わず笑顔になる。
二人で何処に行こうかと話し合いながら歩いていると。
ふと目が止まったウィンドウ。
思わず足も止まる。
「どうしたの?」
「ぇ、あ…あの服可愛いな、と思って………」
私の目の先にある服を、桃太もまじまじと見る。
「うん、今着ている服も可愛いけど、あれも似合うと思うよ?」
「そうかなぁ。今着ているのね、一番のお気に入りなんだ」
「へぇ?そういえばよく着てくるよね」
「………桃太が、コレ初めて着た時に、可愛いって言ってくれたから…」
「ぇ?」
「だから、お気に入り」
笑って見上げると、桃太がなんか顔を赤くしていて。
「どうしたの?」
不思議に思って覗き込む。
「ぇ、ううん。何でもない。(可愛いなぁホントにもぅ………)」
桃太が赤くなって黙り込んだのを見て、なんだか自分ですごく恥ずかしいことを言ったような気がしてきて。
私の頬も思わず赤く染まる。
二人してなんだか甘酸っぱい沈黙を味わった。
きっとまわりから見たら変なカップル………なのかな。
桃太がコホン、とわざとらしく咳き込む。
「ぁー、あのね」
「?」
「………何着ても可愛いと思う、よ、僕は」
「!」
今度こそ、私の顔は赤い。
だってこんなにも熱いし、心臓はばくばくいってる。
桃太の顔ももっと赤い。
桃太のクセに………慣れないこと、言うから。
くすり、と自然に笑みがこぼれた。
「だから、この服も見てみよう?」
ちょっと目線を泳がせながら言った桃太に、私はすごく愛しさを感じて。
「うん………見る」
桃太といれば。
きっとお気に入りがもっともっと増えていって。
それはきっと。
とてもとても幸せなことだと、私は思いました。