< メ ロ 『 悪 夢 を 見 た 夜 は 』 >
就寝して、間もない頃。
俺はふと目を覚ました。
扉の向こう…アイツの気配。
「メロ………」
ぎ…っ、と俺の寝室の扉が開いた。
誰がどういった理由できたのか、俺にはすぐに推測がつく。
「また悪い夢でも見たのか?」
眠いたい目をこすりながら起きあがる。
予想通り、アイツが枕をぎゅぅっと抱いて佇んでいた。
目元が濡れている………泣いた証拠だ。
「ぅん………」
アイツが暗い部屋をよたよたとこっちに来る。
俺はその慣れた光景に、いつもどおり溜息をつく。
っとに…仕方がない奴………。
あの孤児院にいた時からそうだった。
ぎぃ…とベッドが軋む。
目を開ければそこにいるのはいつもコイツで。
「メロぉ………」
「なんだよ」
「ひっく…怖い、夢、見たの………。一緒に寝ていい………??」
「何言ってんだ。ガキじゃねぇんだから独りで寝ろよ」
「ぅぅ〜………」
震えながら泣くコイツをいつも俺は結局ベッドに入れてやった。
「メロのそばって安心する………」
「はぁ?」
「メロは優しいねぇ………」
頭がおかしいのかと、思った。
いつも俺が顔をしかめて疑問符をとばす横で、安らかに寝るコイツ。
俺が孤児院を出たとき、真っ先についてきやがって…なのに邪魔だと言えなかった。
ついてきてくれたことが…嬉しい、だなんて、そんな感情があったことに驚いた。
「………ったく」
俺がベッドの半分を空ける。
そこにいつもどおりアイツが潜り込む。
俺が再度横になると、ぎゅぅ、と胸のあたりに頭をよせてきた。
「ありがと………」
そうして、俺に安堵の笑みを向ける。
何故か、俺の口元も緩んでいた。
孤児院の頃とかわったこと、といえば。
いつの間にか潜ってきたアイツと向き合うような形で寝るようになったこと。
それと………。
無意識のうちにそっと頭を撫でてやると、頬を俺の胸にすりよせてきた。
白い首筋に柔らかな肌…滑らかな髪………。
心臓が、跳ねた。
昔とは違う。
俺だってもう19であって。
いつも。
いつも抱きしめたい衝動に駆られては、それを押さえ込んで。
いったいいつまで我慢できるだろう。
すぅすぅと聞こえはじめた寝息に、溜息をつく。
窓から見える月が俺を嘲笑ってる気がする。
心臓が、跳ねて………寝れる、わけがない。
きっと明日も寝不足だ。