＜　メ　ロ　『　メ　ロ　』　＞















穏やかな朝の光が、窓から差し込んでいることがわかる。

けれどそれは別に俺を覚醒させる程度のものでもなくて。
俺は久し振りに心安らかに安眠とかいうやつを貪っていたんだ。





けれど………。





「メーロっ」



うるせぇ………。



「メロったらぁ…」



うるせぇよ………。



「メーロメロメロメーロメロ♪」



変な歌歌うな…なんだコイツ………。



「ねーぇメロ〜。メロったらメ〜ロ〜」



………………ッ。



「メーロ！メーロ！メーロメロ！！はい！！！」

「だぁぁああ！！うるせぇ！！！」

「あ、起きた♪」

「お前な！俺は徹夜明けだと言っただろ？！眠いんだよ、寝かせろよ！！」

「だって〜…」



目の前にいる相棒兼恋人の女がぶぅっと頬を膨らませる。

っとに可愛くねぇ………。
俺は人選を誤ったな…。

女はぶちぶちと文句を垂れた。



「メロがいなきゃつまんないよ〜…そうでなくても最近構ってくれなかったのに………」

「ボスや他のヤツラに遊んでもらえばいいだろーが…」



俺は不機嫌そうな目でコイツを睨みつけた。

だいたい、コイツ俺より年上じゃなかったのか？
いつものあの冷徹さはドコにいったんだよ、全く…。

仰々しく俺の前で溜息をついて見せる。



「あーあー、わーっかりましたよメーロさん」

「じゃ、回れ右してこの部屋出てけ」

「………………ちぇっ」



なんだよ、そんな拗ねた目で見たって知らねぇよ。
さっさと寝かせろってんだ。

再度安眠を貪る為、布団を被って目を閉じる。










と。










「ん」





軽く、触れた唇。

俺は驚いて目を開けた。
すでにアイツは扉を開けて部屋から出ようとしている。

そこでちょっと振り向いて、唖然とする俺に言いやがった。





「あんまりほっとくと、浮気しちゃうんだから」





べ！と舌を出して扉を閉める。


…急にこんなことするなよな………。
顔が熱いのなんて気のせいだ、気のせい。

そう思って俺は再度布団に潜り込んだ。










目を閉じた俺の脳内で何度も何度も…沙智の声が繰り返される。



『あんまりほっとくと、浮気しちゃうんだから』


『浮気しちゃうんだから』


『浮気しちゃう』


『浮気』





………………。


くっそ………！！

俺本当にアイツ嫌いだ………！！！










数十分後。
どうしても寝付けなかった俺が部屋から出ると、アイツが喜んで飛んできた。

………むかつく…。