< L 『 好 き 』 ( masque ver. ) >
草木も眠る丑三つ時。
暗い暗い部屋の中で、私はぼんやりとパソコンに向かうLの背中を見ていた。
愛しい愛しい猫背。
その指先は唇を弄び、キーボードを叩く。
別に先に寝ていてもいいのだろうけど、何だか眠れない今夜。
私は勝手に起きて夜更かし。本を読んだりしていた。
よくあることだから、別にLも気にしてないみたい。
メール通知が来たのか、机の上で私のスマートフォンの画面が光った。
集中と静謐を邪魔しないよう音もならなければ震えもしない。
そっと手に取り内容を確認しては。
ため息、ひとつ。
早急に返事を送った後、私は再びLの背中を見た。
愛しい…愛しい猫背。
仕事の邪魔になるとわかっていながら、私は自分を止められず。
そっと椅子から立ち上がり、猫背に近づく。
「えーる」
振り向かない。
うーん、予想どおり。
「大好きだよ」
ぴくり、と動いた。
キーボードを叩く音が止む。
「Lが好き」
私は後ろからLを抱きしめた。
「好き」
「好き」
「好き」
「好きだよ」
「Lが好き」
「もうホントに好き」
「大っ好き」
「……どうしたんですか、急に…」
いぶかしそうにLが私を見た。
そんなことお構いなしに、私はLを背後から抱きしめたまま。
「……愛してる」
文句を言わないってことは嬉しいってことだよね?
Lが急に甘え始めた私の頭をそっと撫でた。
「…何か…、」
「よし、1ヶ月分!」
「………は?」
訳がわからず間抜け顔のLに、私はにっこり微笑みかけた。
「てことで明後日から、おおよそ1ヶ月お仕事だから!よろしく!!」
「…ぇ」
固まったLに、私は至極サワヤカに笑いかけた。
何だか一杯喰わせてやったような気分。
愉快、愉快。
一瞬固まったLが、だんだん…だんだん眉を顰めてゆく。
「…そうですか」
あ、え?
ゆらりと立ち上がったLにどこか恐怖を覚えた。
その異様な雰囲気に、私は思わず後ずさる。
じりじり、とヤツは近づいてくる。
ええっとォ…?
もしかして、マズった?
「っぎゃ!」
手首をつかまれ、連行された先。
「ぎゃ、とは何ですか。もう少し可愛い声は…出ますよね?」
ベッドに私を押し倒したLが、にんまりと口の端を上げる。
「…1ヶ月分、ですよね?」
「………!!」
「では……………、」
「ちょちょ、ちょっと待って無理!!」
「お仕事は明後日から、でしたよね?」
「いやいやちょちょちょ………っっ、何考えてんの?!いや、何となくわかるけど!」
「ですから、一か月分……」
「ぎゃー!!せめて二週間っ、来ないで変態ー!!!」
「五月蝿いですね…」
そうして唇を塞がれた私の叫びは、夜闇に消えましたとさ……………。