< L 『 寂 し い 』 ( キャラメル ver. ) >
「ねぇ、L…」
「………」
呼びかけてみても、Lはパソコンを睨みつけたまま微動だにしない。
「………はぁ」
私はLの背中に見切りをつけて、与えられている「自分の部屋」に入った。
立てた音が邪魔にならぬよう、扉をそぉっと閉める。
(…寂しい、な…)
こつん、と額を扉にあてた。
いつものことだから慣れているっていえば慣れている。
仕事を始めれば構ってくれないことや集中すれば呼んでも返事がないことや……。
…些細なことだってわかっている。
けれどLと一緒にいて、初めてそんな些細なことが寂しいのだと知った。
(……寂しい…)
ただ広いだけのベッドに身体を投げ出す。
胸を締め上げる痛みに、訳もなく足をバタつかせた。
「寂しい寂しい寂しい寂しい…っ」
枕に顔をぎゅっと押しつけたまま、小さな小さな声で呟き続ける。
Lには、聞こえないように。
「寂しい…寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい………っ!」
少しは痛みが収まるかと思った。
それは予想通りで、痛みは収まった。
その代わりに、ぽっかりとした空洞を胸に残して。
とても…からっぽな、虚しい気分…。
「寂しいよ…」
とうとうぽたり、と涙一粒が枕に吸い込まれた。
苦しい
痛い
虚しい…
がちゃ、り
「……!?」
聴こえた音に私はがばりと起きあがった。
気づかれないうちに慌てて涙のあとを拭う。
振り向けば扉からじっとこちらを見ている…L。
「ぇっ、L?どうしたの?」
Lは至極不思議そうに、まんまるな瞳で私を見ている。
えーっと…何か…したかなぁ。
声は、聞こえてないと思うのだけど……、
「今…、」
Lは指を口元に持ってきた後、一瞬上を見上げた。
そうしてまた視線を私に戻す。
「今…此処から私のこと、呼びました?」
「へ?」
「貴女に呼ばれた気がしたのですが……」
私は首を横に振る。
「ううん。呼んでないよ?」
「そうですか……」
Lは顔をしかめて頭を掻いた。
その様子がなんだか可笑しくて、可愛くて、私は軽く微笑む。
「とりあえず仕事に戻ります………」
「うん、お仕事頑張ってね」
「ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げてLが出て行く。
(「寂しい」の声聞こえちゃってたのかな………?)
そんなはずはない。
とても小さな、声だったから。
気がつけば埋まっていた、胸のなかのからっぽ。
『貴女に呼ばれた気がしたのですが……』
Lのその言葉がじんわりと広がる。
何処か嬉しくて、くすぐったい。
自然とこみあげる、笑み。
(ちょっと、恋人………っぽい)
そんなささやかな幸せ、かみ締めた昼下がり。