一年、経る毎に人は、ひとつ、年を取るという。















   Happy Halloween (L)















暦とは、単なるものさしに過ぎない。


はるか昔世界で農耕が始まり、人々は住み着くことを覚えた。

余剰収穫と信仰が、階級を生んだ。


植物の成長と気温。

河川の氾濫と天候。

天の日月蝕と信仰。


それらの周期が人々に暦を作らせた。


暦を操る者が権力を得た。

正確な暦こそが覇者の証だった。


そして人はそのものさしを、己が人生の長さを測る基準とした。



……………。



そのようなもので人生の長さを測るという行為。

ましてや自分が生を受けたその日を、
そのものさし基準に祝うということが、果たして重要であるだろうか?



……………。








自分には必要ない 








そう、思っていた。












大切な人が



「ん?」



出来るまでは。



「Trick or treat.」

「はいはい〜」



やはり祝ってもらいたい。

この世に生を受けたから、貴女と逢うことが出来たんだ。



「じゃーん、今年はパンプキンパイだよっ」



たとえそれが不可能だと、知っていても。



「美味しい?良かった!」



祝ってもらうといったって、格別欲しいものがあるわけではなくて。

貴女のお菓子は美味しいし、貴女は今日も私に笑いかけてくれる。





「ん?」



あぁ、でも。



「Trick or Treat.」

「えっ!さっき食べたじゃん……」

「足りません」

「も、もうないよ……」



そうですね。



「では悪戯していいのですね?」

「え、ちょ、L……ッ!!」








貴女が、欲しいです。