それは夜の帳が街を覆いつくした頃。
一組の男女が再会を果たす。



「メロ………」



久々に見たアイツは俺を見て瞳をくりくりさせた。
全然変わらないアイツ………
ずっと待たせていた。

俺は何だかまんじりともせず、右下前方、の家の花壇を見ている。



「全部、終わったんだ」



ただ一言、それだけ告げた。















   08 ちっともかわらないね















「そう………」



の返答、妙に宙にひっかかったまま。

気まずい雰囲気。
感動の再会といく訳がない。
ほぼ捨てる様なカタチでコイツの目の前から姿を消したのはいつだったか。



「………終わったんだ………」



もう一度、ぽつりと呟く。
は何も言わずに俯いていた。



今更の目の前におめおめと姿を晒して俺は何がしたかったのだろう。



ただもう、背負うものも何もなくなって。
全てを流すことなんて出来やしないけどそれでも。
なんとかひと段落着いたカタチが出来上がった。



そしたら急に、逢いたくなって。



気付けば再会を果たしていた。

なんて我儘、傍若無人、我ながら笑える。



俺はきっと(絶対)を傷つけただろうし、恨まれて当然だ。
急に姿を消してかれこれ2年程連絡を取っていない。
そんなオトコがどうしてもう一度会おうなんて気になったのか、自分でもわからない。
にはの、俺の知らない生活がある雰囲気が見て取れた。


は、何も言わない。


俺はここからきっと去るべきなんだろう。

俺達の間に話すべきことなんて、きっともう。


けれど、逢って元気そうで安心した。

そんなことを言えば怒るだろうか。


自分でも傲岸だと思う。



「………メロ」



名前を呼ばれた。
顔を上げることが出来なかった。
何かがずっしりと俺の心に居座っている。

を見たいけれど見れない。

罪悪感?いや、違う。



風が吹いた。
まだ少し冷たい春の宵。
前髪が揺れた。
冷たい石畳に温かな光が伸びている。





急にふと。

目の前に手が現れて。


俺の前髪を、上げた。





動けなかった。





目の前に、の顔。


目線が絡み合う。





俺は………







「メロ、ちっともかわらないね」







嘘だ。



俺は、かわってしまった。





爆破事件で、顔に傷まで負って。



に言えないような悪事にだって手を染めたんだ。







の瞳が潤み揺れて、睫毛が震えている。



それでも、彼女は、そのまま、笑って。







「ちっとも、かわらないね」















あぁ。



かわらないものがあるとすれば。



呆れてしまうけれど。



ありえないくらい呆れてしまうけれど。







この気持ち、くらいのもので。















俺の前髪を退けた手をつかんで引き寄せた。


抱きしめる。



柄にもなく、泣きそうだ。
















今更、俺はきっと。



ただ。







赦して欲しかった、だけなんだ。